白川君のこと

高校1年から3年までクラスが同じで仲がよかった友人に白川健二君がいた。

kirei762

高校の卒業式が終わって、数日後、クラスの遠足がある、と言う連絡があった。
卒業したら何もかも終わりだと漠然と考えていたので、今さらと思ったが、白川君にひと目会っておきたいなと。

白川君は3年間同じクラスで、帰りはほぼ毎日一緒の仲のいい友人だった。
私は国立希望だったが、彼はすでに関西の大学に合格していて、遠足の日の2日後に関西に行くと人づてに聞いていた。
何故関西かというと彼の兄がやはり大阪の大学に通っているからだそうだ。
毎日一緒に帰っていたのに、卒業式前はいろいろあって一緒になれなかった。
だからちゃんとした別れはしていなかった。

場所は聞いたが、集合時間は聞いてなくて、とりあえず9時頃学校に着くと、教室に中西君が一人でいた。
ええ? みんなどうしたの?
- 直接○○海岸に行くらしいよ
(そうか、卒業したんだから、またクラスに集まることはないんだ)
知ってた?
- ううーん
 どうする?
- どうしようかな。 お前は行くの?
(白川に会いたいし・・・) これから行こうか

場所は○○海岸で、海水浴場があるので、中学時代まで家族で、毎年夏には1回は行っていたところだ。
で、バスしか足がなかったので、バスで行くことに。
学校は町外れにあり、しかも海岸行きのバスは営業所発で本数が少ない。
二人で受験の話をしながら歩くこと20分、バスを待つこと30分・・・
そしてやって来た○○海岸経由のバスはやたら古くびっくりした。
更に驚いたのはワンマンでなく車掌さんが乗っていたのだ。
しかもその若い車掌さんは小学校が同じ学年の子。
中学校は別で、高校は女子校に行ったと聞いたことがあったが、どうしたんだろう?
で、彼女は車内で切符を売ってくれたのだが、随分安くしてくれたのだった。

kumanokaigan

11時過ぎ、海岸に着くと誰もいない。
半曇りの海は灰色がかって、なんとなくさびしい。
広い海岸なのでだれがどこにいるかさっぱりわからない
歩きまわっていればだれかに会うだろうと二人でぶらぶら歩いていた。
ほんとは中西君なんかとは別れて白川を探したいのだけど、どうもうまくいかない。

帰りの集合時間は2時だったよね。
- うん 
腹減ったね
- レストランに行くか。 誰かいるかも知れないし。
 そうだね

レストランは集合場所の建物内にあるのだった。
ここからだとかなりある。
とぼとぼ歩いているとやたらお腹が空いてきて、我慢できないくらいに。

ねぇねぇ、すげぇ腹減ったんだけど、あそこの売店でなんか食わねぇ
- オレも。 今日はよく歩いたからね。
売店の前の椅子に座って、菓子パンを食べていると2人連れがきた。
むむ、今度は4人で行動する羽目になってしまった。

(略)

集合場所には2時5分前についた。
もっと早く着きたかったが、一人ではなかったので、「オレ先に行くから」って言えないんだよね。
すげぇ、もどかしかった。

みんながいた。
白川が目に入った。
彼はわたしを見つけると駆け寄ってきた。
期せずして両腕を握り合う。
彼の乗るバスが停まっていた。
ー じゃぁ、行くから
・・・

なんだ、なんだ。 この儚さは。
こんなにあっけない別れは悲しすぎるだろう。
バスが去っていくのをぼんやり見ていた。
夢の中にいるようだった。
今日はいろいろあって本当に疲れた・・・
好きだったサヨ子ちゃんは来ていなかったな。
銀行の研修だとか聞いたような・・・

誰とさよならをしたのか全く記憶に無い。

自分だけみんなと違う所に住んでいたから、家に電話して、姉に車で迎えに来てもらった。
みんな帰って一人で姉を待っていた。
あんなにからっぽで、うら悲しい気持ちで時間過ごしたのは最初で最後だった。

白川君とはそれが最後だった。
その後わたしは遠くの大学に行き、家を出た。
海辺の近くにある大学は開放的で学生たちは洗練されていて、素晴らしい友人たちやデイトする女の子も(複数)出来た。

クラス会は時々やっていたようだが出たことはない。
一度春休みだったか家に戻った時、町中で中学時代仲の良かった友達にばったり会った。
一緒に歩いていると、「ここで君のクラス会をやってるんだってよ」と料亭の前で言った。
ええ? なんでオレが知らないでこいつが知ってんだ?
と不思議に思いつつ二階に登って部屋を見るといたわ20人ほど。
サヨ子さんもいて少し驚いた。
なんか自分のいる場所ではない気がじんじんしてすぐに出た。
それっきりクラスの誰とも会ったり話したことはない。
ひとりだけ、小学中学高校と一緒だったN君が近くの大学に来ていて、夏休みプールのアルバイトをしていた時遊びに来たことがあった。

いつだったか忘れたが、母から白川君の父親が定年で退職になると両親は大阪に引っ越したと聞かされた。
それまでもそれからも白川君や高校時代の事は、わたしの頭の中から消えていたのだった。
ただ古典の授業の事はふと思い出すことはあったが。

ごくごく最近彼と別れた最後の日の寂しさを思い出すようになったのは何故だろう。