昨夜NHKBSで「蕨野行」が放送された。
この映画に関する知識は全くなくて、放送寸前に「姥捨て」を扱ったものだと知ったしだいだ。


東北の貧しい寒村のお年寄りにしてはみんなふくよかで、欧米映画の俳優達が映画のために減量増量をする努力が全くない日本映画の俳優女優陣たちだ。
が、すぐにそれを忘れてしまうほど彼らの演技力とストーリーの奇抜さ、撮影とテンポのよさに見入ってしまった。
恩地日出夫監督
「楢山節考」と違うのは老人達が生きる努力をする行為だ。 
これが映画に明るさをもたらしている。 
しかし食べ物のない晩秋から雪が降り出す冬には命を永らえることは出来ず死んでしまう。 
そして翌年にはまた60になった年寄り達が「蕨野」に来ることになる。
 口減らしのために3男の嫁が妊娠すると嫁は家を追い出されてしまう。
 行き場のない彼女たちは山に逃れそこで何とか生きるものもいるが。

樋田慶子さんが出ていて驚いた。
この人1934年生まれだそうだ。
中原ひとみさんは年をとってもかわいらしい。
李麗仙さんが口の悪い婆さん役で出ている。 この人は1942年生まれだそうで、もっと年を取っているかと思っていた。
性悪な女だったが死に方は上手なり、と言われる。
この映画は老人達の悲惨な最後を描いているのに、救いがある。
それは、ラストの、死んで「窮屈な殻」から抜け出して体がふわふわ軽くなったと笑いながら雪遊びをする老人たち描かれるからだろう。
以前社会科の高校の先生から、「東北地方の農民達は第二次大戦まで米の飯はほとんど食っていなかった」と聞いて、腰を抜かすほど驚いた事がある。
 ネットで調べてみると東北地方は4,5年周期の飢饉の連続だったようだ。
人増減口記録の細かいデータも残っていて、飢饉の年とそれ以後のもたらす結果はひどいものだ。
そして飢饉は天災だけでなく、藩の為政による失策もあったようだ。
明治維新の時、東北地方は津軽藩のみが天皇方だったそうだが、時代を読む力もなく、農民を顧みる心もなかったこの地方の為政者たちが非難されることはない。
「白虎隊」の話は為政者の愚弄を非難すべきが、若者の死と言う悲劇にすり替わってしまい同情を引く。

人間とは所詮この程度のものだろうが。
あれ、最近人を非難する傾向が出てきてしまった。
株価の信じられない下落ぶりにストレスがたまってしまう・・・